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2021.12.23

連載伊東浩先生の「初心者向け撮影テクニック」

≪第9回≫露出の要素について

≪第9回≫露出の要素について

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露出の要素って何だろうって、いきなり難しそうなテーマかなって思った方も大勢おられると思います。露出の要素って、平たく言うと、シャッタースピード、絞り値、ISO感度、被写体の明るさの関係の事で、写真の出来栄えを左右する要素の基礎中の基礎の一つです。

****** この記事は、「旅と写真.comメルマガ」に掲載された記事を再構成したものです。 *****

(1)シャッタースピード

まず最初に、この中からシャッタースピードについて、易しく解説しましょう。

まず、シャッターがどういうものかを理解しましょう。
シャッターとは左の様に、黄色枠の部分がイメージセンサーと同じ大きさの「窓」が切ってあり、この窓の開閉によって、イメージセンサー上に光を当てる部品のことです。
シャッターユニットと呼ばれています。
この窓の開閉時間がシャッタースピードと言われる数値になって、カメラで設定できるようになっています。 
理屈の上では「開閉時間」なので、「シャッター秒時」が正確な呼び名ですが、秒時という言葉が聞き慣れないので、シャッタースピードと便宜的に呼んでいます。
以下SSと略して説明していきます。

SSってどの位設定できるのだろう?SSを変えるとどうなるなの?
数値のうえでは30秒-1/4000秒まで18段階の設定ができる機種が多いようです。
絞りは7段階程度、ISO感度も8段階の変化が一般的なので、実際に露出を変える手段はSSが一番広範囲に変化させることができます。

風景などのあまり動かない被写体の場合は、絞り値を自分で決めて、明るさの変化に従って、SSが自在に変化する「絞り優先AE」が使いやすいと思います。

ところで動いている被写体に関しては、SSは露出を変化させる以上に重要な役目があります。
つまり動きを止めて撮るとか、わざとぶらせて撮る等の少し高度な技法があります。
次の作例を見て下さい。

さて、この2枚は同じSS、1/8秒で撮りました。上は止まった車、下は動いた車です。
車の速度は自転車程ですが、ブレブレで写真になりませんね。

こちらは同じSS、1/125秒で撮った、ほぼ同じ速度で走る車の写真です。
ぶれ方は下の方がだいぶ大きいですね。これは撮影距離が下の方が短い(近い)からです。
走る電車の車窓の景色が遠くと近くではスピードが違うように感じますよね。これと同じ現象です。
だからSSがいくつだから止まるとか、止まらないとは言えません。
この辺りが少し厄介ですね。何度も撮って体験して少しずつ感覚を覚えて頂ければと思います。

さて、最後は滝の写真です。上はSS、1/600秒、下は2秒です。水の流れは、SSが早いと荒々しさが強調され、遅いと滑らかさが強調されます。
このように、SSの違いで作風が大きく異なりますね。
皆さんもSSを単なる露出制御で使うのではなく、このように異なった表現をできるよう、使いこなせるようになってください。


(2)絞り値

まず、絞り値を理解するうえで「絞り」とはどういうものかを理解しましょう。

上の図にある絞りは、虹彩絞りと言って、人の目の虹彩と同じような構造をしています。
周辺から中心に絞りの遮光版が覆っていくタイプの仕組みになっています。
そして、これはカメラの本体ではなく、レンズに組み込まれた機構です。

Fxxという数値で表され、Fに続く数字が大きいほど、絞られた状態(開いている部分が小さい)になります。
その中でも、全く絞らない状態のF値を開放絞り値といって、この値が小さいレンズは「明るいレンズ」と呼ばれいます。
この絞りの役目は文字通り、レンズを通過する光の量をコントロールして、露出を調整することです。
前回、お話したSSが開閉時間で光量を変化させるのに対し、絞りは光の通り道を広くしたり、狭くしたりすることで光量を変化させています。

そして、絞りもこの光量変化以外に重要な役目があるので、詳しくご説明しましょう。その役目とは、「被写界深度」の調整で、簡単に言うとボケ具合の事です。
被写界深度自体の説明は、メルマガ7号で紹介済みですので、ここでは省きますが、絞りの値で実際にどのようになるか見てみましょう。

今回は、はがき大の和紙にフラワーアレンジメントを施したものを、50mm相当の単焦点レンズで撮りました。
そして、被写体の大きさがほぼ同じになるように撮っていますので、撮影距離もどれも同じぐらいです。
純粋に絞り値の変化で見てもらえばご理解いただけると思います。
わかりやすく、小絞り(F値の大きい方)から開けていくときの変化を示しています。

これはF16、ピントをピンクのバラに合わせて撮りました。かなり絞り込んでいるので、はがきの手前と奥はもちろん、下地の楽譜も音符が分かる程度にピントが合っています。

F8で撮影しても、結構被写界深度は深く、なかなかボケてくれません。和紙のなかの範囲では、どこもピントは合っているように見えますね。

これはF4で撮りました。少しボケた感じがわかると思います。
でも和紙の中のお花は相変わらずはっきりしており、ボケ感は今一つですね。

実は、デジタルカメラ本体に付属して販売されている「レンズキット」と言われるものは、F4程度の絞り値が最も明るい値のことが多いので、ボケ感的にはこのぐらいです。
これ以上のボケ感を望む場合はF値の小さくなる、明るいレンズを使います。今回使った機材は、AFS Nikkor 35mm F1.8Gですから、更に2段強開けられます。

これはF2.8の作例です。被写体は少し違いますが、和紙が同じサイズなので、焦点距離と撮影距離は前の作例と同じです。
このぐらい絞りを開けると、和紙の範囲の中でもボケ感がわかるようになります。

F2の作例です。中心のメインの花以外、かなりぼかされていますね。
このぐらいにボケ感が出ると、奥行き感が現れてくると思います。

一般にF2.8、F2の絞り値が実現できるレンズは、かなり高価なズームレンズか、単焦点レンズとなります。
単焦点レンズであれば、手ごろなお値段でF値の小さな「明るいレンズ」が購入できます。
是非、単焦点レンズでボケ感を楽しんでみてはいかがでしょうか?


(3)被写体輝度

被写体輝度って聞きなれない言葉だと思いますが、平たく言えば、被写体の明るさの事です。
そして、厳密に言えば、被写体自体の明るさというのではなく「カメラ近傍の照度」の方が、表現的にはより近い概念なのですが、単純に撮影者側から見た被写体の明るさのことを「被写界照度」と言う、と理解してください。
その明るさの程度を表す単位はLux(ルクス)を使います。

この被写体輝度もF値やSSの様に変更可能です。例えば、太陽自体を被写体にしたい場合は、大変明るすぎるのので、NDフィルターを使って減光します。
また、屋内でのテーブルフォト等のケースで、明るさが欲しいとき、LEDの照明機器やフラッシュ等の補助照明機器で増光します。
被写体輝度はカメラやレンズだけでは制御不可能ですが、フィルターや補助照明を使えば、ある程度の変化は可能です。

そしてこの「被写界輝度」と、前回お話した「絞り値」、前々回の「シャッタースピード」の3つの要素を組み合わせて、実際にイメージセンサー上でどのくらいの光量になるかを「像面露光量」と言い、Lux・sec(ルクス・セック)で表します。
もう少し詳しく言うと、被写体輝度と絞り値で明るさの程度Luxを決め、シャッタースピードでイメージセンサー上の照射時間Sec(秒)を決めます。
この像面露光量をコントロールすることが露出制御の基本なのです。

前述のSSやF値は、被写体のブレやボケの範囲と言った露出制御以外に大きく影響を与える要素を含んでおり、その使い方によって作風が変わるというお話をしました。
言い換えると、作風を優先すると、各露出要素の変更には一定の制御が加わるので、他の要素で補完しながら、必要な「像面露光量」を確保する必要があります。
今回は、ちょっと深い話をしましたが、「像面露光量」は重要な概念ですので、覚えておいて損はないと思います。

では、うんちくはこの位にして具体的な作例を見てみましょう。

NDフィルター装着

PC現像後

上は山頂にある日没前の太陽を撮って、山をシルエットで入れた作例です。さすがに太陽をこの程度まで形があるように写すためにはND100という透過率1%の減光フィルターを使います。
そして、撮れた写真を下の写真のようにPCで部分的に明暗を変える処理をします。
シルエット部分を少し明るくして、太陽自体をもう少し減光すると、幻想的な作風に仕上がります。
NDフィルターを使わないと、撮影条件が見つからない位、太陽が明るすぎて白く飛んでしまいます。

こちらはフラッシュで増光量の違いを示した作品です。ともにフラッシュを使っていますが、下の作例は上の作例の約+1.7段の増光です。
増光しないと手ブレするほどスローシャッターになってしまいます。

このように小道具を使って被写体輝度を変化させて、自身の思いのこもった写真を撮ってみましょう。


(4)ISO感度

ISO感度(以下ISOと略します)って、言葉は聞いたことがあるでしょう。でも、どういったものなのか正確に理解していないかもしれませんね。
ISOには、200とか1600とかいくつか数字があって、数字を変えると撮れた写真がどう変わるのか?設定自体が「オート」っていう項目があったりして、一体どうなっているのやら?と言うことで少し細かく見ていきましょう。

これまで、露出要素のSS(シャッタースピード)、F値(絞り)、被写体輝度(被写体の明るさ)の3つは、既にお話した「像面露光量」を構成している要素であると説明しました。
この3つは変化させるとイメージセンサーに当たる光の量、明るさが変わるということをご理解いただいたと思います。
でも、ISOは像面露光量を変える事とは全く無関係なのです。
言い換えると、ISOを変えても像面露光量、つまりイメージセンサーに当たる光量は変化しません。
じゃあ、何のためにあるのか?という疑問が出てきますよね。

元々ISOは基準となる「像面露光量」をイメージセンサーに当てて、実際の写真画像にしたときに、標準的な見栄えになる基準値を業界で決め、これをISO100としました。
そして、基準の像面露光量は写真をフィルムで撮っていた時代、フィルムのISOと同じ条件で撮影した時に、同じ見栄えの写真として仕上がるように決めたものです。

さて、実際にお手持ちのカメラでISOを変えて撮ってみましょう。
例えばPモードにして、ISO100とISO400で撮ってみると何かが変わりますか?

上の写真、ISO100にしました。ISO400にすると下のような写真になると思っていませんか?
実は、露出モードがM以外であれば、撮られた写真は一見何も変わりません。

ISO200

ISO400

ISO800

ISO1600

作例を見ると、一目瞭然ですね。
これはMモード以外では自動露出なので、ISOの値に応じてカメラが「像面露光量」を変化させてしまうためです。
一般にISOは100が基本で、そこから大きくなる方向に動かします。ということは、像面露光量が小さくなる一方となります。
もう少し理屈をいうと、「像面露光量XISO=写真の見栄え」となって、自動露出モードでは、この見栄えが常に一定になるようカメラの内部で調整しています。

一方、写真の見栄えは像面露光量が前述した業界で決めた基準値に近い方が、見栄えが良いのです。
このあたりは後編でお話しますが、今回のところはこのように覚えておいてください。
だから、ISOは100に固定しておいた方が綺麗な写真が撮れます。

現在販売されている多くのデジタルカメラはISO=オートという設定ができますが、これもカメラ内部でそのカメラで設定できる最少のISO(概ね100か200)をできるだけ維持し、基準の像面露光量を確保できるよう、他の要素(SSやF値等)を調整するように動作します。

ということで、今回はISOの意味と、その値は100にしてくださいねっていうお話でした。うーん、まだもやもやしていますね。では、なぜISOが100より大きな数、カメラによっては25600とかが設定できるのでしょうか?

では、どういうときに数字を大きくして使うのか?そのケースをご紹介しましょう。

<1>非常に暗い環境での撮影

上の2つの作例は、動物園で夜行性動物を撮影したものです。夜行性動物は、明るい環境では隠れて生活しているため、動物園では、かなり暗い状態で展示されています。
人の目でもやっと見られるくらいの状況なのですが、人の目は暗い所にしばらくいると、暗順応という適応が出来て、それなりに見えてきます。
ところが、カメラのイメージセンサーはその時の「像面露光量」でしか撮影できないので、こうした圧倒的に像面露光量の足りない状況では、感度を上げて対応するしか、目に見える画像にはなりません。

この2つの作例は、ISO25600で撮影しています。
もちろん、できるだけ像面露光量を稼ぐために、絞りは最大まで開けていますが、それでも追い付きません。
また、SSをバルブにして1-2分シャッターを開けると、今度は動物が動いた時にぶれてしまいますし、三脚も立てられない環境ですので、手ブレも大きくなります。
ましてや、補助光源を使うなどは動物へのダメージが大きく、厳禁です。要するに、飼育されている環境を保ったまま撮影するにはISOを上げた高感度撮影しかありません。

<2>それほど暗くないけど、動いている被写体

次は、イルミネーションを撮った作例です。

このイルミネーションは、縞状に色が変化して波のようにゆっくりとうねります。そのため、あまり高速のSSにすると、LEDの点滅による黒筋が現れます。
また、三脚も使用できるのですが、SSを遅くして理想の像面露光量に近づけることは可能なのですが、SSを遅くすると色が混じって極端な場合には全面白くなってしまいます。
従って、撮影できるSSが1/30付近に限定されるため、それに見合うISOが必要となります。上の作例では、SS1/15に設定し、ISO6400で撮りました。

もう一つの作例は、暗闇で踊るシーンです。イルミネーションでステージダンスをするパターンです。これはもうSSは1/250ぐらいにしないと被写体が止まりません。欲を言えば、1/400ぐらいにしたい状況です。また、フラッシュを使っても写りますが、せっかくのイルミネーションが台無しになって、作品的にはNGです。従って、これも理想的な像面露光量の確保は難しいので、ISO10000にして、何とか見られる画像にしました。

いかがですか?ISOを上げて撮るのは、主に夜景などの暗いシーンで、かつ像面露光量を確保する手段がないときに利用するのが適切だということがご理解いただけたでしょうか?

では、ここでISOについてまとめてみましょう。

1,像面露光量が確保できる状態では、ISOは最低値あるいはその近傍の値にする。

2, 作品意図の見地から像面露光量が確保できない状況のとき、ISOを変化させ、意図した仕上がりの画像になる程度に、大きな値にする。



<3>ISOを大きな値にした時の欠点

ISOを大きな値にして撮ることは、元々像面露光量が少ない画像を無理やり見られる写真にするわけですから、当然「しわ寄せ」が来ます。
それが「ノイズ」です。ノイズは、日本語では「雑音」と訳されますが、写真のノイズは画像の荒れ(ざらざら感)となって現れます。

ISO200(上)とISO1100(下)の画像を比較してみましょう。

一見同じように見えますが、影になった左下の部分を拡大してみます。

ISO1100の下側の写真の方がざらついているのが、よくわかりますね。これがノイズです。明るい部分では目立ちませんが、同じように出ます。
写真の質に大きく係わりますので留意してください。最近のカメラは、このノイズを低減する機能が優れていますが、完璧ではありませんので、無用な高感度(ISOを大きくすること)は避けましょう。

なぜノイズが出るのかは、かなり難しい物理現象なので、説明は避けます。ここでは、ISOを大きくすると、ノイズに悩まされる、ということを覚えておいてくださいね。

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